失敗し放題が最大のメリット!理科実験の最強アイテム「ブレッドボード」の秘密
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
「電子工作って、なんだか難しそう…」「ハンダごてを使って、火傷しちゃいそう…」
そんなイメージを持っている人はいませんか? 実は、熱いコテも、溶かすハンダも一切使わずに、まるでブロックを組み立てるように電子回路が作れてしまう、「魔法の板」があるんです。
みなさんは「ブレッドボード」をしっていますか? ブレッドボードは、LEDや抵抗などの電子部品(素子)を、ハンダ付けすることなく、穴に差し込むだけで取り付けることができる、夢のようなパーツです。
ところで、なぜ「ブレッド(パン)の板」なんて面白い名前がついているのでしょう? それは、はるか昔、電子工作がまだ黎明期だった頃、技術者たちが本当にパンを切るための木製の板(Breadboard)に釘を打ち、そこに部品を固定して回路の試作品(プロトタイプ)を作っていたから、という説があるんですよ。なんだか歴史を感じますよね。
はじめてこれをみたとき、「あ、これなら授業時間内にいろいろ配線できるから、生徒といっしょに実験ができるな!」と感動しました。
そして実際に授業でブレッドボードを使って、回路を作って、電圧などを測ることなどを行っています。ハンダ付けだと一度失敗するとなかなかやり直せませんが、これなら抜き差し自由。生徒たちが失敗を恐れずに、何度も試行錯誤できる。これこそ理科の実験にぴったりだと思ったんです。
そんなブレッドボードの授業のはじめには、まず「魔法の板」の仕組みを探る、こんな実験を行っています。中の配線の様子がわからないと、うまく回路が組めませんからね。これは良いトレーニングになりますよ。
科学のレシピ:魔法の板の「秘密の地図」を作ろう
【準備するもの】
- ブレッドボード
- ジャンパーコード(ブレッドボード用の短いコード)
- デジタルテスター(または導通チェッカー)
【手順】
1 デジタルテスターでブレッドボードの穴という穴に端子を挿して、電気が通るか(導通)を調べていきます。 テスターを「抵抗(Ω)」モードにした場合、もし通電していれば(内部でつながっていれば)、抵抗値がほぼ0(ゼロ)に近い値が表示されます。(「導通モード」があるテスターなら、ピーッと音が鳴って教えてくれますよ!)
2 通電している(つながっている)穴の組み合わせを、紙に書いたブレッドボードの図に、赤ペンで結んでいきます。
さあ、どんな「秘密の地図」が浮かび上がってきましたか?おそらく、両端のライン(電源ラインと呼ばれます)はタテに長くつながっていて、真ん中の部品を挿すエリアはヨコに5穴ずつ短くつながっていることがわかったはずです。この独特な構造こそが、電子部品を効率よく配線できる秘密なのです。
たったこれだけのことなのですが、はじめてテスターやブレッドボードにさわってみる生徒も多く、みんな夢中になって試行錯誤していました。クイズのように「ここはつながってる?」「じゃあ隣は?」と試すことができるのも面白いですよね。ぜひご自宅でもそろえて試してみてください。
失敗し放題!だから科学は面白い
ブレッドボードの本当に素晴らしいところは、リサイクルできる(=何度でも使える)ことです。
ハンダ付けの場合、基板は基本的に一回使ったら終わりですし、部品を外すのも一苦労です。 でもブレッドボードなら、部品を抜けば、また新しい回路を一から作ることができる。つまり、失敗し放題、試行錯誤し放題なんです。
これは経済的というだけでなく、「間違えたらどうしよう」という不安を取り除き、科学の最も大切なプロセスである「試行錯誤」を促す、教育的にとても大きなメリットだと感じています。
今はこのブレッドボードを使って生徒たちをトレーニングして、いつか彼らが先生役になって、小学生対象に「電気回路体験会」などを開くのも面白いかな、と考えています。
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